心の温度
言葉
「主任!」っと声を掛けると振り向いた主任は私を見て微笑んでくれた。

「北川さんも食事前に入ってきたんだね」

「はい。でものぼせそうなので上がってきました。
本当にいいお湯でお肌がしっとりしましたよ。
連れてきて下さってありがとうございます。」

「俺も久しぶりにゆっくり温泉に浸かったよ。
やっぱり温泉はいいよね」

「はい。温泉大好きですから。」

「でも、結婚してた時はしょっちゅう入ったでしょう?」

「ふふふ。さっき私も思い出したんですが、一度も入った事ないんですよ」

「は? 嫁ぎ先が旅館だったのに?」

「ええ、いつも『館内ウロチョロするな!』って元ダンナにキツく言われてましたから…」

「クソだな!」

「え?」

主任は海をじっと眺めてた顔を私に向けた。
「ねぇ〜、北川さん……ふぅ〜 *…▲○」と後の方はゴニョゴニョ呟いて聞こえなかった。
< 222 / 330 >

この作品をシェア

pagetop