心の温度

「大輔はさ、大学時代に建築家の登竜門的なコンクールで最優秀賞を取るくらいの実力のある設計士なんだ。大輔は佐藤建築工業でプロジェクトを終えて設計室で俺みたいに一般住宅の設計をしてて、
その時入社してきたのが中川くんで、大輔は彼の教育係りだったんだ。
中川くんも2級建築士の資格は大学の時に取ってて
設計室で先輩の雑用をしながら仕事を覚えていたんだ。まぁ、後輩が仕事の出来る先輩への憧れが強かったらしいが…

丁度、大輔が結婚が決まった頃、佐藤建築工業の社内で悪さをしている社員の大掃除作戦があってさ、

とにかく大輔はあの容姿だから女子社員からも人気があったんだわ。
その女子社員に情報を教えてやる代わりに性的な要求をしていた人事部の課長がいて…
もちろん会社はその課長を左遷させた。

自分が社内不倫したのに奥さんにもバレたみたいで逆恨みしてヤケになったその社員は、大輔のせいだとナイフで刺そうとしたのを中川くんが大輔を庇って刺されたんだ。

中川くんが刺されて佐藤建築工業の社長と大輔の父親の井上不動産の社長が相談してさ、
中川くんが大輔がいなくなる佐藤建築工業の設計室に残れば会社に居づらくなるだろうと、井上不動産の設計課に転勤してはどうかと中川くんに打診したら、自分は設計には向いてないのでこれからも大輔を守ると言って、入院中に秘書検定の勉強して合格してから井上不動産へ転職したって聞いた」
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