オー!マイ・ハワイ!
はぁっはぁっ……と激しい息づかいだけが聞こえていた。まなみはラベンダー色の絞りの浴衣に、藍色の帯をしめた。うん! 久しぶりだけど、うまく着れた──ミスコンで着付け審査もあったので、着付けは慣れていた。

「準備できたよ」

そう言って、パウダールームから出ると修二は、いいじゃんと言ってまなみをぎゅっと抱きしめた。

「このまま、もう一回したいくらい」

「せっかく着たからだめ」

「帰ったら、それ脱がすのやらせてよ」

「えーっ!?」

「さ、もう行こう。飯食ってちょうどいいくらいだよ。何食べたい?」

「うどん! 洋食あきちゃった」

「ビーチの近くにチェーン店あったな。そうしよっか」

わいわい話しながら、ヴィラを後にし、車に乗りこんで出発した。

その日、ヴィラに帰って来れなくなるとはふたりともこのときは、思っていなかった。詩乃はワイキキビーチのイベント会場で、とびこみのダンス大会に出ていた。英語も堪能、現地の友人もずいぶんいる。

詩乃はひとしきり踊って、友人とカクテルをあおっていた。

「詩乃、うかない顔じゃん?」

ブロンドのスレンダーな女の子が、ため息をつきながらカクテルを飲み干した詩乃に声をかける。

「お兄さまの婚約者を囲んで、あしたバーベキューがあるんだけど、気が進まないのよ」

「楽しそうじゃない? 何か問題でも?」

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