オー!マイ・ハワイ!
そっと離れて顔を見上げる。すごく近くに顔がある。きれいな顔だな。お互いずいぶん長いこと見つめあっていたような気がした。

「……、キャメロンが呼んでるんだっけ。行ってくるわ」
修二はパッと向こうへ走って行ってしまった。

『修二が好き』──たったこれだけなのになんですぐ言えないんだろう。

まなみはヤシの木の奥のフェンスから、ワイキキ方面の景色を眺めた。高台にあるキャメロンの自宅からは、海までよく見える。さわやかな南風が吹いてとても気持ちいい。

そうだ、怒ってみるのをやってみようか。いきなり怒れるかな?とりあえず言ってみるか。まだ怒ってないけど。「隆史のバカヤロー!! あんな結婚ギリギリで浮気しやがってー!!」

……、意外といけるな。高級住宅街にまなみの声がこだまする。もっとやってみようと、息を大きく吸い込んだ。

「このおたんこなすー!! すっとこどっこーい!!」

「私よりかわいくて若い子選ぶってどういうことだよー!! しかも私がハワイにいく直前にデキ婚したんだろー!! 風のウワサで聞いたんだからー!! 調子にのるのもいい加減にしろよー!!」

「私は悲しかったんだぞー!! 隆史が大好きだったんだー!! 汗水たらして農家の嫁として働くのを夢みてたんだー!!」

「ぜったい後悔させてやるからー!! 私、もっともっと幸せになるんだからー!!」

「隆史の大バカヤロー!!!」

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