オー!マイ・ハワイ!
ツヤのあるセミロングの黒髪、色白な肌に、小柄な身長。折れそうなくらい細い手首。屈託なく笑う顔がかわいらしくて仕方ない。映画を見に行った帰りの電車。混み合う車内のドアの近くで、俺は由香がつぶれないよう壁になっていた。けっこう苦しいんだよコレ。わかってくれてるのかな?

「なんか、修ちゃんまた背が大きくなった?」

由香は、俺が必死に壁になっているのをまったく気にしていない様子で、顔を見つめてくる。こんなに近くで見られたらドキドキするだろ。それともわざとやってるんだろうかこいつは。

「そうだな、お前よりはずいぶんデカくなったな」

「あはは、わたしクラスで1番小さいからね。なんかちょっと悔しい」

自分の中で由香の存在が、日に日に大きくなっていく。そのことを少しずつ実感しながら一緒に成長してきたように思う。

高校生にもなると、それなりに行動範囲も広がり、ホテルで《《する》》ことも増えた。

「由香、大丈夫? 痛かった?」

「大丈夫。これって毎回こんな痛いのかな」

「少しずつなれるんじゃない?」

「だといいんだけど……」

ホテルのベッドの中でまどろみながら、話をした。初めての想い出は、ぜんぶ由香と一緒だった。

初めてのデート、初めてのキス、初めて一緒になった日。

このまま大人になって、由香と一緒に家族になることになんの疑いもなかった。あの日、由香が入院するまでは。
< 70 / 154 >

この作品をシェア

pagetop