オー!マイ・ハワイ!
「元気じゃなくても、結婚しよう」

「あははっ、ありがとう。まずはがんばって退院しないとね」

「骨髄移植の手術、するんだって?」

「うん、お姉ちゃんと型が合ったみたい。うまくいくかはわからないけど。退院したら、お祝いにパフェおごってよ」

「ああ、いいよ」

「1番大きいのがいい」

「えっ? あの予約して食べるやつ? マジか。無理じゃね?」

「お祝いだからいいでしょ?」

「わかった、約束する」

「やったー! 治療、がんばるね」

なにげなく由香と話した、これが最後の会話になった。由香が退院することはついになかった。

骨髄移植手術は成功したが、その後に患った合併症が悪化。不可逆的昏睡状態に陥った。いわゆる脳死の状態であった。

このまま何年も生きるかもしれないし、明日死ぬかもしれない。

由香の両親は、脳死の選択をすることはできないと、治療継続を望んだ。

由香は目覚めはしないが体調が安定し、一般病棟に移ってきた。面会はできるがもちろん受け答えはできない。

「由香、修二くんきてくれたわよ」

由香の母親がそう声をかけ「ごゆっくり」というと、病室を出ていった。俺は高校を卒業して大学生1年生になっていた。

「由香、きょうはいい天気だよ。桜の季節は終わっちゃったけど、また見にいこうな」

白い肌は、ますます白くなって透き通るようだった。ガリガリになった手をそっと握る。

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