オー!マイ・ハワイ!
「由香、俺大学生になっちゃったよ? お前との結婚資金まだ貯めてるよ? 目を覚まして。パフェ食べに行こ?」

スースーとかわいらしい呼吸の音がするだけで返事はない。

それから由香が亡くなったのは半年後のことだった。由香の両親が連絡をくれた時、俺は剣道の大会で九州にいた。すぐに飛行機で帰ったが間に合わず、由香は病院の地下室で、顔に白い布をかけられていた。

そっと白い布を取ると、死んだなんて嘘みたいにきれいな顔。いまにも動き出しそう。その頬をそっと撫でると氷のように冷たかった。

「由香、由香、ゆか……」
問いかけて、問いかけて、問いかけて……。父親が迎えにくるまでずっとそこで声をかけていたらしい。そのときのことは、いまもあまり覚えていない。

白血病と診断されて約1年、あっけなく由香は逝ってしまった。

葬式は家族葬だったけど、俺も参列した。由香の姉と一緒に骨を拾う。細くて今にも折れそうな由香の骨。骨まで華奢だったんだな。

葬式の間、俺は一度も涙を流さなかった。心はどこか遠く、違うところにいるようで、ここにいるのは自分ではないような、不思議な感覚のまま家に帰ってきた。

「お兄ちゃん、由香ちゃんは……」

「ああ、最後まできれいだったよ」

「……っ……ひっ……うっ……うっ」

詩乃がわぁわぁなくのを母親が慰めていた。それを見てもまだ涙はあふれてこなかった。

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