オー!マイ・ハワイ!
自分の部屋に戻ると、バタンとベッドに倒れた。

もう、二度と由香には会えなくなってしまった。そのことにまだ実感すらない。熱を持った骨を、箸で拾った感覚だけが手に残っている。

心が壊れてしまったのか、悲しくもなんともない。感情は由香と一緒に燃えてしまったようだった。

泣きもせず、塞ぎ込むこともなく、淡々とまるで何もなかったかのように過ごす俺の姿は、不憫でしかたなかったと、あとで母親に言われた。何もなかったように過ごす俺の様子が、あまりにおかしかったのだろう。父親は留学しないかとすすめてきた。日本を離れたら、気持ちも変わると思ったようだ。

家族や友だちに、気を使われることもいやになっていたので、父親の言うように、ハワイへ留学することにした。

旅立つ直前、初盆を迎えた由香の家に行った。月命日には必ずきていたが、しばらくこれなくなるので、由香の両親にあいさつもかねて。

「修二くん、ハワイに行くんだって?」

仏壇に線香をあげ、お参りをすませると、由香の父親は声をかけてきた。

「はい、3年は行ってくるつもりです」

「そうか……ひとつお願いがあるんだ」

由香の父親は、仏壇の奥から小さな巾着袋を出してきて俺に渡した。

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