オー!マイ・ハワイ!
「すみません、俺……」

取り乱したことが申し訳なく、じいさんに謝ると、気にすんなというように手を挙げた。

ゆっくりと船は港へ帰っていく。俺は散骨したあたりをじっと見つめていた。そこが見えなくなるまで──

港に着いたのは、もう太陽が海の向こうに沈んでいったあとだった。

「ありがとうございました」

「つらかったな」

「……でもよかったです。初めて泣いたんで」

「幸運を」

「ありがとうございます」

じいさんと握手をして港をあとにした。宿泊先のドミトリーに戻ると、ツアー客は庭でバーベキューをはじめていた。俺の姿を見つけると、客のひとりが手招きをした。

「あなたも飲みなさいよ!」

「すごく目が腫れてるわ、何か虫にでもさされたの?」

「さあ、飲め飲め、肉もあるぞー」

あーっ、もう。人が悲しみに暮れてるっていうのに、うるさい人たちだな。いつ俺があんたたちと友だちになったんだ──

不思議なことに感情があった。
この感覚、ものすごく久しぶり。無気力な自分は、もうどこかにいっていた。

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