オー!マイ・ハワイ!
なんとかそのツアーに最後のひとりとして滑りこんだ。ハワイの観光地なんて、留学中にいくらでも行ったけど、そんなこと言ってる場合じゃない。

千載一遇? 一期一会? チャンスの神様に後ろ髪はない? とにかくひとこと声をかけることさえできれば、きっとなんとかなる。あなたとのデートをいったいどれだけ妄想してたと思ってるんですか、まなみさん!パイナップル園で、声をかけることができたのは彼女が困っていたおかげだった。困っている人に声をかけるのは得意だから。

やっぱりむこうは覚えていなかった。まあ当たり前か。でもいまは目の前に彼女がいる。それは信じられないほどの幸運だった。

妄想デートと頭が混乱して、すぐ「まなみさん」と呼んでしまったのは失敗したと思ったが、むこうも俺のことをすぐ呼び捨てにしてきたのでほっとした。

もうそこからは自分の気持ちをなんとか抑えこみ、いかに普通にいているか、余裕をみせるかに集中する。

詩乃のおかげ!? もあって、まなみは婚約者役を引き受けてくれた。いや、役なんかじゃ終わらせない。日本に帰るときにはまなみと恋人になって帰るんだ。

──まなみがシャワーを浴びている間に、いままでのことを思い出していた。偶然とはいえ、手の届かないところにいると思っていた人が、ハワイの俺の部屋にいる。不思議なもんだ。

バルコニーに出て、海を見る。なぁ、由香。サンドバーに誰かと一緒に行ったことなんてなかったけど、あしたまなみを連れて行ってもいい? 俺が前に進もうとすること、許してくれる? 

由香へ何度も問いかけて問いかけて問いかけた……。
< 93 / 154 >

この作品をシェア

pagetop