笑顔が消える
出逢い③
俺は、何度も声をかけた。
だが、彼女は、少し微笑んで
「ありがとうございます。」
と、いうだけで。
太智さんにも
「見てられない。
俺に何か出来る事ないのですか?」
と、言うが
太智さんは、首を横に振るだけだった。
彼女に何が起きてるのか
まったくわからない。
ただ、ただ、心配だった。
今日は、元気かな?
あの笑顔が、みれるかな?
と、カフェに通うが
彼女の元気な姿を
見ることはなく
俺は、心配だった。
どうしてこんなに
彼女が気になるのか
俺の苦手な女性だぞ
何度も自分に問う
まして彼女は、既婚者だ。
わかっている
既婚者だろうが
俺は、三嶋 彩代さんに
惚れている。
だからといって不倫とか
考えてない。
彼女が元気にさえなってくれたら
それだけで。
初めて自分が
こんな気持になる女性に出逢えた。
胸が苦しいが·····
彼女が幸せなら·····と
近頃、少し彼女から笑顔が見られる。
彼女の元に若い男女が来ている時だ。
太智さんが言うには、
三嶋さんのお子さん達だと。
やはり、彼女は、良きお母さんなんだ。
良かった、彼女が元気になって。
「元気になって良かったです。」
と、言うと
彼女は、びっくりした顔をしたが
「ご心配おかけして、
申し訳ありません。
少し元気になりました。」
と、恐縮しながら
言う彼女に。
俺は、そんなつもりで言ったわけでは
なかったから
「いいえ。俺が勝手に
気にしていただけですから。
あなたは、笑顔がとても
似合う方だから
笑っていて欲しいと。
あっ、すみません。
人間ですから、いつも笑っていられない
事もありますよね。
無神経にすみません。」
と、頭を下げると
彼女は、クスクス笑いながら
「いいえ。とても嬉しいです。
そんな風に思って貰えて。
ありがとうございます。」
と、笑ってくれた彼女を
思わず抱き締めてしまって
「おい!」
「きゃっ!」
太智さんと彼女
「わぁっ、すみません。」
と、慌てて離すと
彼女は、驚いた顔から
クスクスと笑いだし
「彩代ちゃん。ごめんね。
こいつ悪いやつじゃないから。
ずっと、彩代ちゃんが
元気ないの心配していて
「あっ、太智さん?!」
「何だよ。本当の事だろ。」
と、言い合う俺達に
目を白黒させる彩代
「小野さんは、彩代の笑顔が
無くなってきた時から
ずっと心配していて
太智にも訊ねたりしてね。」
と、言う香菜恵の言葉に
そんなに?と思い
小野さんを見ると
小野さんはおでこをおさえていた。
彩代は······
この人達に
沢山心配かけていたんだ。
自分が、辛くて悲しくて苦しくて
回りを見る余裕なかった。
その日は、
太智さんと香菜恵と小野さんと彩代は、
閉店後に四人で食事をしながら
少しだけアルコールを飲んだ。