笑顔が消える
出逢い④
太智さんに帰り小野さんに
送ってもらうように言われたが
やんわりお断りをした
だが····
「心配なので近くまででも
送らせて下さい。」
と、小野さん。
あまりにも寂しい顔をされるから
送って頂く事に。
今日は、金曜日で夫?は
真夜中まで····帰ら···ない····
「少し歩きませんか?」
と、言われて
あの家に帰りたくなかった
だが、
「小野さんは、遅くても
大丈夫なんですか?
私と歩いて大丈夫ですか?」
小野さんの様な素敵な方に
恋人?奥様?がいないわけないと。
私は、私みたいな悲しみを
他の方に味あわせたくないから
そう訊ねた。
すると小野さんは、
「もしかして、恋人とか妻とかの
心配ですか?」
と、返されて頷くと
小野さんは、真面目な顔を私に向けて
「恋人もいません。
結婚もしたこともありません。
ただ······」
えっ?結婚も、恋人も?いない?
それに「ただ?」とは?
「ただ、気になってしかたない
女性は、います。」
と、言うから
「そうですか」
その言葉に落胆している自分がいて
彩代は、自分に驚いていた。
でも·····と思い
「それでは、その方に誤解されると
大変ですから
ここまでで大丈夫ですから
小野さんは、お帰り下さい。」
と、言うと
小野さんは、大きなため息をついた。
そんなに嫌なら
送るとか言わなければ
と、怒りさえわき·····
どうして、小野さんに気になる人がいて
ため息つかれただけで
こんな気持になるのだろうと
自分の気持ちを持て余していると
「やはり、
こんな言い方では伝わりませんよね。
すみません。」
と、言う小野さんに
何を言われているかわからずに
首を傾げると
「聞き流して頂いて構いません。
ですが、私の気持ちを知って
頂きたい。
私は、三嶋 彩代さんが
気になって仕方ありません。
初めは、綺麗な方だなぁと
思っていましたが
あなたの笑顔に元気を貰い
その笑顔が見たくて通っていました。
だが、ここ数年
あなたの笑顔は·······
寂しげで····苦しげで····辛そうで
心配で心配で。
あなたの役に立ちたくて
太智さんにも言いました。
だが、太智さんは、首を振るだけで。
私は、あなたがどんなことで
苦しんでいるのか
泣きそうな顔を時々されるけど
それが、どうしてなのか
知り得る方法がありません。
私だったら、そんな顔なんか
させない。
私だったら、あなたにいつも
笑っていて欲しい。
私は、あなたが好きです。」
と、言われた。
小野さんの気持が
心に染み込む
私をこんな風に想ってくれる方が
いるのだと
本当に嬉しかった。
「泣かせてしまってすみません。
既婚者のあなたには迷惑なだけの
話しですよね。
わかっています。
ですが、しばらくは
心の中で好きでいさせて下さい。
気持ち悪いかもしれませんが
彩代さんには、無理矢理近づきません。
だけど、Cafe-tasteには、
行かせて下さい。」
と、頭を下げる小野さんに。
「Cafe-tasteにお見えになって下さい。
小野さん、いらっしゃらないと
太智さんが寂しいと思いますし
私も寂しいので。」
と、言うと
小野さんは、目を見開き
私を見るから
「私なんかを
こんな風に想って頂き
驚きましたが、
小野さんの言葉が心に染み込みました。
ありがとうございます。
私の話しを訊いて頂けますか?」
と、言うと
小野さんは、頷いてから
「すみません。」
と、言って私を抱き締めた。
身体に一瞬力が入った。
修也さん以外の男性から抱き締められて
でも、嫌ではなかった。
むしろ安心できた。
小野さんは、
しばらく、私を抱き締めてから
公園に行き
私をベンチに座らせて
自分も私の横に腰掛けた。