笑顔が消える
逢瀬
一年も経たない内に
物件(マンション)も回りきり
大体決まった。
だが、美弥と土日会えなくなるのが
嫌だったので
まだ、探している事にして
美弥の売上が心配だから
手付だけを支払った。
三年目には、
もう、おかしいと思うだろうと
彩代に決めた物件を
一緒に見て欲しいと伝えた。
その時、彩代は、
「あなたが気に入れば良いのでは?」
と、言っていたが
「そんなわけにはいかないだろう。」
と、俺は言って
その週の土曜日に彩代を
連れてマンションを見に行った。
もちろん、美弥の案内で。
事前に美弥には、
話しをして謝罪もした。
はじめて会う妻と美弥。
美弥は、自分の紹介した。
「お初にお目にかかります。
安田不動産営業の田中美弥と
申します。
気に行って頂けますと宜しいのですが。」
と、頭を下げる。
「三嶋です。
宜しくお願いします。」
と、彩代は言っただけだった。
もっときちんと挨拶できないのか
と、思ったが···
美弥の案内であちこちを見て回るが
彩代は、何も言わなかった。
気にいったのか、気に入らないのかも
わからなかった。
美弥に申し訳ないと思い
「おい!!
なんか言ったらどうなんだ。
みっ、田中さんにも悪いだろう。」
怒りで、美弥といいそうになり
訂正したが、どうせ あいつには、
わからんだろう。
と、思っていると
「あなたが、こちらの田中さんと
見て回り気にいって決めたのですよね。
私に何か言うことがあるでしょうか?」
と、言われて
えっ、と思うが
言葉の綾だと思い
「お前も住むのだから
お前も気に入らないと。」
と、言う俺の言葉に被せて
「勝手に決めて来てですか?
私が嫌だと言ったら止めるのですか?
そちらの方が田中さんに失礼では?」
と、言われて
グッと、言葉がとまる。
美弥が
「奥様、何か気に入らない箇所が
ございましたら、
おっしゃられて下さい。
ご検討させていただきます。」
と、言うが
「いえ、結構ですよ。
主人と貴方が気に入っているのでしたら。」
と、美弥に向けて言い
「もう、宜しいですか?」
と、俺に言うと
妻は、玄関に向かった。
「おいっ、田中さんに失礼だろ。」
と、妻の後姿に向かって言うが
妻は、そのまま玄関から出て行った。
何だあいつ?!
と、訝しく思いながら
「すまない。
愛想もないやつで。」
と、美弥に言うが
美弥は、聞いてない····ような·····
返事をした。
その日からは、
時間を作り美弥とあった。
前みたいには会えなかったが。
会えないとなると
会いたいと、余計に気持ちが募る。
美弥の料理は美味しく
いつも俺を中心に考えくれて
俺は、居心地が良かった。
その時······俺は·······
妻である彩代の事が
すっぽりと抜け落ちていた。
彩代は、身長も165センチと高く
少しふっくらしていたが
働き始めてからまた
元の用にスマートになった。
元々、手足が長く綺麗な顔立ちを
している。
その上
料理も完璧
何を作らせても美味しい
子育てもきちんとやってくれて
子供達は、三人共 母さん子だ。
俺も子育ては、できるだけ
手伝っていたが。
美弥と共にいて
そんな彩代の労いも何も
無くなっていた。