笑顔が消える
離婚届
帰宅をすると妻が玄関にいて
「お話があります。」
と、言われて
「あっ、俺も。」
と、言い
玄関から上がり
リビングへと向かい
ソファーに座ると
妻が、お茶を出してくれた。
それを見て
なぜか、ホッとする自分がいて
「ありがとう。」
と、言っていた。
妻もソファーに腰掛け
お茶を一口飲むと
俺の顔を見て
「離婚してください。
いいえ、離婚します。
これに記入して下さい。」
と、言って一枚の紙を広げた。
◆◆◆ 離婚届 ◆◆◆
記入日こそ記載してないが
後は、俺の箇所以外全て
埋まっていた。
妻の欄•••
記入されていて
妻の証人欄は、妻・彩代の母親の
名前が記載されていた。
夫の欄は•••
未記入で、夫の証人欄には
俺の父親の名前が記載されていた。
俺は、離婚届の用紙と
彩代を交互に見ていると
彩代は、立ち上がり
どこかへ行き
戻ってきて
また、同じ場所に座った。
そして、離婚届の用紙の上に
ボールペンを置いた。
まるで、ボールペンが
無いから書けないのね
と、言わんばかりに。
俺は、口を開く事が出来なかった。
すると、妻が·····
「田中さん。
安田不動産の田中 美弥さん。
とは、どうなりましたか?
いや、別にききたいわけでは
ありませんから。
でも、五年になりますか?」
と、言われて
えっ、思っていると
「わからないと、でも?!」
と、言う妻・彩代の顔は
歪んでいた。
「初めは、あなたを信じていた。
だけど、マンションを見学に行くのに
そんなに毎週行く必要があるのか
と、思い始めて
ましてや、私達が暮らすはずなのに
あなたは、一人で行く。
おかしいと思いました。
そして毎週、金曜日の残業。
あなたは、私を裏切らないと
思っていました。
いや、信じていました。
だけど、この年になって
裏切られるなんて
思ってもいなかった。」
と、言う妻に
「すまない。」
と、頭を下げる事しか
出来ずにいると
「やめて下さい。
意味のない謝罪は。
何に対して謝っているのか
わからない。」
と、言われた。
「私は、あなたを見て気づいたの。
だけど、長男・空也(あや)と
長女・真代(まよ)が
あなたと女性が食事をしている所、
歩いている所を見たらしいの。
それも毎回金曜日に。
それで、悩んで私に話してくれたの。
私に話す前に空也が悩んで
三嶋のお義父様に相談したみたい。
お義母様は、偶然だと
言ってあなたを庇っていたみたいだけど
お義父様が少し調べられたみたい。
調査内容と写真を見て
お義母様は泣かれていたと。」
と、言われた。
俺は、いったい
何をやっていたんだ。