最強総長は姫を眠らせない。🌹

 私は、ふっ、と力なく笑う。

 きっとこの手紙も破り捨てられて、読んでもくれないんだろうな。


「お母さん、ごめんね……」


 私は学生鞄を右肩にかけ、水色のスーツケースを引きながらショートブーツで歩き、マンションの部屋を出た。

 その後、しばらくして私は電車に乗る。

 日曜日の夜だからか車内はガラガラ。

 窓の外を見ると、月が出ていた。
 私はスーツケースを隣に立てたまま、自分の口に右手を当てる。
 両肩が震えて、涙が止まらなかった。



「何よ、真っ暗じゃない」
 雪乃(ゆきの)の母、(ゆき)は勤め先の病院から帰って来た。

 巻いたロングの片方を左肩に乗せ、デニムにホワイトニットを着ている。

「電気はあれ程つけとけって言ってんのに」
 (ゆき)はパチッと押して電気をつけ、汚いソファーに鞄を放った。

「ん? スペアキーと手紙?」
 (ゆき)は手紙を取って読む。
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