最強総長は姫を眠らせない。🌹

 (そら)くんが今、目の前にいる。
 泣かずにはいられない。

「はっ、女の子が落ちそうになってんのに全員見て見ぬふりかよ」
 (そら)くんは嫌味を言うと、赤髪のヤンキーを鬼の形相で睨みつける。

「で? 弁償がなんだって?」

「お、お前、鬼雪(おにゆき)の総長!?」
「すんませんでした!!」
 赤髪のヤンキーは血相を変え、慌てて逃げていく。

 え……。
 今、なんか凄いワード言わなかった?

雪乃(ゆきの)、右足、大丈夫か?」

 あ、ローファー脱いだままだった…。

「ローファー履いてた時、つま先の部分踏まれたんだけど」
「つま先の部分まで足届いてなくて、なんとか脱げてセーフだったよ」

「そう。制服は? 濡れただけ?」

「あ、うん」

 せっかく(そら)くんと再会出来たのに、グレープフルーツ臭いなんて…。

「はー、良かった」

 (そら)くんは安堵(あんど)すると私の前に右足のローファーを置く。

「ほら履けよ」
< 9 / 392 >

この作品をシェア

pagetop