破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 そして、こうしてやけに冷静に事の次第を分析出来るのも……何もかも、私はもうクレメントの事が、そういう意味では全く好きではないからだ。

 それは、一緒に歩いている彼も重々にわかっていると思う。自信家の彼には珍しく、時折寂しげな目をすることがあったから。

 それを見て、心の何処かには彼を慰めたい気持ちがあった。この人は紛れもなく、私が前に好きだった人だった。けれど、それは同情でしてはいけないということもわかってはいた。

 何もかも。もう、すべて終わってしまったことだ。


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