破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 ここに来る間に、ランスロットのことを考える時間はいくらでもあった。だから、私はあまり気が付きたくない事実に、今更だけど気がついてしまっていた。

 もし、ラウィーニアがコンスタンス様への恋する気持ちをなくして仕舞えば、我が国の王太子の精神状態はガタガタになるはずだった。その間、政務は滞り国は回らない。政敵や敵国は喜び庭駆け回り、沢山の人が困る代わりに沢山の喜ぶ人が居るはずだ。

 国の一大事と言って、差し支えない。

 けれど、今現在。筆頭騎士の一人、ランスロットが私への恋する気持ちを失っている状態なのが、耐え難いと思っているのは……多分私一人だけだ。ランスロット本人は、そもそも私の事を気持ちを含めすべて忘れてしまっているので、彼が次の恋をすれば全て解決してしまう。

 ここで魔女が引き受けてくれなかったら……ただただ、私一人が泣くしかないという、とても悲しい状況だった。

 先を行ったクレメントは、ドンドンと大きな音をさせて扉を叩いた。中から迷惑そうな声が響き、私たちは息を詰めて彼女の登場を待った。

「はいはい聞こえてるよ……なんだい。あら。良い男」

< 109 / 254 >

この作品をシェア

pagetop