破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 誰にも詳しい事情を話したくもないような、最低な恋の終わりだったのに。これ以上、関係のない誰かにどうこう言われることが耐え難かった。

「ああ。すまないね……悪かったよ。私も、東の地ソゼクを出る時は色々とあってね。それにしても……お節介が過ぎたね。ごめんね」

 切ない表情ですまなさそうに微笑んで、グウィネスは脱衣所をゆっくりと出て行った。もしかしたら、こんな辺鄙な地に一人で住まなければならない辛い事情を思い出させてしまったのかもしれない。

 でも……だからと言って、自分自身の叶わなかった恋と私達を重ねられても困る。

 最低な理由の始まりとひどい終わりだったと知れた後は、私とクレメントの甘かったはずの恋の記憶は、思い出すのも嫌なくらいに苦いものに成り果てた。

 黒い泥に塗れた身体を綺麗にして身体を拭き、私は簡単な作りの白いワンピースを着た。そうしている時に、トントンと扉を軽く叩く音がした。

「はい?」

「……悪い。まだだったか」

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