破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
扉の向こうに居るクレメントの、聞き慣れた低い声だ。私が浴室を使っていた間も、彼は泥塗れのままで待機していたんだった。慌てて長い髪を拭いていた布を置き、扉を開けた。
「ごめんなさい。遅くなって」
背の高い彼は、なぜか難しい表情で目の前に居る私の顔を覗き込むようにした。
「……何?」
彼の妙な動きを訝しむような私に、クレメントは淡々とした口調で言った。
「いいや。付き合っている間に、一回くらいヤっときゃ良かったって思っただけ」
クレメントの真剣な赤い目は、彼の思いもよらなかった言葉を聞いて口をポカンと間抜けに開けたままの私を、まじまじと見つめている。
私だって一応は貴族令嬢の端くれなので、初夜までは純潔な事が必須事項だ。だから、彼とはそういう意味で夜を過ごした事はなかった。元彼と言えど、キス止まりのとても健全なお付き合い。
「もうっ……本当に最低っ」
私が両手をぎゅっと握りしめて睨みつけると、彼はフンと鼻を軽く鳴らして肩を竦めた。
「ごめんなさい。遅くなって」
背の高い彼は、なぜか難しい表情で目の前に居る私の顔を覗き込むようにした。
「……何?」
彼の妙な動きを訝しむような私に、クレメントは淡々とした口調で言った。
「いいや。付き合っている間に、一回くらいヤっときゃ良かったって思っただけ」
クレメントの真剣な赤い目は、彼の思いもよらなかった言葉を聞いて口をポカンと間抜けに開けたままの私を、まじまじと見つめている。
私だって一応は貴族令嬢の端くれなので、初夜までは純潔な事が必須事項だ。だから、彼とはそういう意味で夜を過ごした事はなかった。元彼と言えど、キス止まりのとても健全なお付き合い。
「もうっ……本当に最低っ」
私が両手をぎゅっと握りしめて睨みつけると、彼はフンと鼻を軽く鳴らして肩を竦めた。