破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「もう。それで……気は済んでくれた? 私を遊び道具にしていたのは、貴方でしょう? ランスロットが怖かった気持ちが、私にはわかる。私だって、好きな人には好かれたくて……嫌われたくなくて。怖くて! 本当の自分を、押し殺していたの。バカみたいに言いたいことも、言えなくて。クレメントにつまらない女だと思われていたのは、もう知ってる。けど、あの時の私にはそうするしかないって思ってて……もう貴方を好きじゃない今なら。バカな事をしたってわかってるけど、好きだからこそ出来ないことがあるのを知っているの。だから、私は……ランスロットを決して責めないわ」

「ディアーヌ……」

「良いから。そこを退いて。ここを、出ていくから……貴方も、早く泥を落とした方が良いと思うわ。クレメント・ボールドウィン。ついでに、水でも被って頭でも冷やしたら? だって、私たち。別れているのよ。その後で誰を好きになったり付き合ったりするのは、私の自由なんだから。貴方はもう二度と、口出しをしないで」

「……悪かった」

 掠れた声でクレメントは呟き、ようやく扉の前から身体を動かした。私はもう、彼の事を見なかった。

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