破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
驚いた私が振り向き、彼が真剣な顔で言葉を続けようとしたところで、ラウィーニアの鋭い声がその場に響いた。
「クレメント・ボールドウィン! 何を、しているの」
私が今にも駆け上がろうとしていた階段の踊り場に姿を見せたラウィーニアは、私たち二人の様子を見て、美しい曲線を描く眉が不機嫌そうに寄っている。
クレメントは大きく息をつき、私をそっと離した。
「申し訳ありません」
「もう、貴方の仕事は終えたんでしょう? 私が前に言った言葉は、覚えているわね?」
こうしてラウィーニアが強い圧を持って人に命じているところを、初めて見た。いつも、彼女は優しく穏やかで上品な表情しか私には見せていなかったから。
「……仰せの通りに。ライサンダー公爵令嬢」
そう言って苦い表情を崩さないままのクレメントは、膝をつき騎士の礼をした後で去って行ってしまった。
「ラウィーニア……あの」
私は、さっきの自分たちの状況をどうラウィーニアに説明したものかと迷った。でも、聡明な彼女は、私たち二人の空気で全てを察しているようだった。
「クレメント・ボールドウィン! 何を、しているの」
私が今にも駆け上がろうとしていた階段の踊り場に姿を見せたラウィーニアは、私たち二人の様子を見て、美しい曲線を描く眉が不機嫌そうに寄っている。
クレメントは大きく息をつき、私をそっと離した。
「申し訳ありません」
「もう、貴方の仕事は終えたんでしょう? 私が前に言った言葉は、覚えているわね?」
こうしてラウィーニアが強い圧を持って人に命じているところを、初めて見た。いつも、彼女は優しく穏やかで上品な表情しか私には見せていなかったから。
「……仰せの通りに。ライサンダー公爵令嬢」
そう言って苦い表情を崩さないままのクレメントは、膝をつき騎士の礼をした後で去って行ってしまった。
「ラウィーニア……あの」
私は、さっきの自分たちの状況をどうラウィーニアに説明したものかと迷った。でも、聡明な彼女は、私たち二人の空気で全てを察しているようだった。