破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 私はその見た目よりも太い筋肉質な彼の腕に取り巻かれていて、自分で勝手に動くことは出来ない。ということは、今大きく開いている扉を閉めることが出来ない。

 ランスロットは一瞬だけ迷った様子を見せた後に、とりあえず腕から解放してくれ、扉を後ろ手に閉めた。

 私は部屋の中に立ち尽くし、扉を背にしたままのランスロットは動かない。

 無表情が標準の彼に慣れているとはまだ言い難い私には、その表情は読みにくい。何を伝えたいのかわからなくて、二人無言のまま。

「……僕を、元通りにするために……貴女がクレメント・ボールドウィンと、東の森に? 確かに彼の火は森の魔物には、特攻で適任ではありますね。二人の他にも誰か、居たんですか」

 ランスロットの口調は、感情は乗らずに淡々としている。彼に事情聴取されている側の私は、この先の展開を想像してドキドキしている。

「いいえ。魔女は気難しいから、出来るだけ少人数の方が良いと言われて……でも、会ってみたらすごく話しやすい良い人で……」

「何か。クレメント・ボールドウィンから、言われましたか?」

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