破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 涼しげなしたり顔をして、向かいの席に座っている私を見つめているラウィーニアは、私のお母様の姉の娘。我がハクスリー伯爵家より、かなり格上となる王家の流れを受け継ぐライサンダー公爵家のご令嬢。

 彼女の母イザベラ伯母様は、日頃から磨き上げられた美しい容姿を持つ上に、頭もすこぶる良い回転を見せる優秀な女性で当時一番人気の貴公子だったというライサンダー公爵を見事に射止めた手腕の持ち主。

 そして、その娘であるラウィーニアが射止めた人物は。きっと、誰もが驚きの。

「もう。自分は首尾良く王太子さまと正式に婚約が決まったからって、失恋したての従姉妹に言って良いことと悪いことがあるわよ。ラウィーニア」

 私が拗ねてそう言うと、ラウィーニアは表情を変えず優雅な仕草でお茶を飲みつつ肩を竦めた。要点だけを言うと私の母方の従姉妹はついこの間、まだ内々にであるものの、めでたく未来の王妃になることに正式決定した。

 我が国の王太子の周囲には幼い頃より、彼女を含め身分の高い令嬢五人が王太子妃候補として集められていた。

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