破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 ムッとした表情を作って彼を見ると、その氷を思わせる瞳には何の感情も見えない。比較してはいけないのは、わかっているけど。何を考えているか、すぐに察することの出来るわかりやすいクレメントとは全然違う。

「ええ。こうして婚前交渉をしてしまえば、貴女は僕以外には嫁げなくなると、理解した上でそれをする外道です。嫌いになります?」

 本当は彼が声を掛けるはずだった一年前にクレメントと付き合い始めてしまった私と、やっとこうして付き合うこととなり、どうしても手放したくないと願う独占欲が垣間見える。

 それを、嬉しいか嫌かとすぐに白黒つけろと言われればそれは難しい。

 出来れば心の準備とか、いろいろ待って欲しかった。こうして、早く自分のものにしてしまいたいという早急さには、複雑な思いではある。けど、それだけ思い募るほどに私のことが、彼は私を好きだったんだと確信することも出来た。

 ギシッとベッドの上に上がる鈍い音がして、気がつけば彼は私の身体を閉じ込めるように腕を置いた。

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