破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 考えを纏めている間、そんなに長い時間ではなかったと思うんだけど。いつの間にか、ランスロットは服を着ていなくて鍛え上げられた筋肉質な身体が美しい。

 美々しい容姿の彼は、全身がこうして鑑賞に耐えうるほどに整っているんだと、妙に感心してしまった。

「ディアーヌ。やっと……君を抱ける」

 その掠れた声で発した願いが、ランスロットがいつの頃から抱いていたものだったのかなんて、私にはわからない。

 一年前の社交界デビューの時から、私に声を掛けようとしていたくらいだ。その前からも、きっとランスロットは私を知っていたはずなんだけど……彼のような人に、一目惚れされるような容姿ではないという自信だけはある。

「して欲しい?」

 彼は何を、とは聞かなかった。

 今までに一回も誰にも貰ったことなどないはずのものを、私は彼に求めているのに。本能の欲するものを与えてほしくて、何度も頷いた。

「言って。言葉で。僕が欲しいと、言ってください。君の唇で」
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