破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
街の中特有の喧騒が聞こえなくなったので、そろそろ城に辿り着くと私はついさっきまで呑気に思っていた。
けれど、通常ならライサンダー公爵家に仕える優秀な御者は馬車を揺らさないためにゆったりと速度を落として進むはずだ。そのはずなのに私たちの乗車しているこの馬車の進みはどんどんと速度を増し、何か良くない予感を連れて来るようにいくつもの馬蹄の荒い音が後方から聞こえてくる。
(まるで……追われているみたいじゃない……)
背筋を、ふわりとした嫌な気配が通り過ぎていく。ラウィーニアは中腰になって紺色のカーテンを開き、小さな窓から外の様子を見た。
「……ディアーヌ。これは……厳しい状況かも、しれない」
ラウィーニアは、長い時を共に過ごした私が今まで見たこともない深刻な表情で硬い声音で告げた。そして、これから私たち二人に起こるだろう出来事を予想したのだろう。自分の太腿に皮ベルトで留めていた小さな守り刀を、彼女はドレスの裾から取り出した。
けれど、通常ならライサンダー公爵家に仕える優秀な御者は馬車を揺らさないためにゆったりと速度を落として進むはずだ。そのはずなのに私たちの乗車しているこの馬車の進みはどんどんと速度を増し、何か良くない予感を連れて来るようにいくつもの馬蹄の荒い音が後方から聞こえてくる。
(まるで……追われているみたいじゃない……)
背筋を、ふわりとした嫌な気配が通り過ぎていく。ラウィーニアは中腰になって紺色のカーテンを開き、小さな窓から外の様子を見た。
「……ディアーヌ。これは……厳しい状況かも、しれない」
ラウィーニアは、長い時を共に過ごした私が今まで見たこともない深刻な表情で硬い声音で告げた。そして、これから私たち二人に起こるだろう出来事を予想したのだろう。自分の太腿に皮ベルトで留めていた小さな守り刀を、彼女はドレスの裾から取り出した。