破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
御者は追ってくる馬からなんとか逃げ切ろうと必死に馬を走らせているのか。激しい鞭で叩く音がして、無理な速度に高級なはずの車輪が軋む音がする。ガタガタと、普通であればあり得ない程に馬車は何度も大きく揺れた。
「軽く、状況だけ説明するわ。今、私たちを攫おうとしているのは、きな臭い噂の絶えなかったジェルマン大臣の手の者だと思う。コンスタンスは、この前に私を襲わせたのは彼だという証拠を掴んだと言っていたの。そして、すぐにジェルマン侯爵邸へと騎士団を向かわせたけれど、そこはもう既にもぬけの殻で使用人なども合わせて一人も……誰もいなかった。そして、何かの証拠となるような怪しい書類なども、見つからなかった。だから、もうジェルマンは国外逃亡していると思われていた。彼を捕縛するための追っ手も幾手にも別れて居るはずよ。でも、あの時不慮の事態とは言え関わることになったディアーヌも、何かの理由で狙われてはいけないとコンスタンスが念のために私に城へと連れてくるように言ったのよ。そして……彼の母である王妃様の気まぐれという形を取って、私たちはほとぼりの冷めるまで共に城へと滞在することになっていたのよ」
「軽く、状況だけ説明するわ。今、私たちを攫おうとしているのは、きな臭い噂の絶えなかったジェルマン大臣の手の者だと思う。コンスタンスは、この前に私を襲わせたのは彼だという証拠を掴んだと言っていたの。そして、すぐにジェルマン侯爵邸へと騎士団を向かわせたけれど、そこはもう既にもぬけの殻で使用人なども合わせて一人も……誰もいなかった。そして、何かの証拠となるような怪しい書類なども、見つからなかった。だから、もうジェルマンは国外逃亡していると思われていた。彼を捕縛するための追っ手も幾手にも別れて居るはずよ。でも、あの時不慮の事態とは言え関わることになったディアーヌも、何かの理由で狙われてはいけないとコンスタンスが念のために私に城へと連れてくるように言ったのよ。そして……彼の母である王妃様の気まぐれという形を取って、私たちはほとぼりの冷めるまで共に城へと滞在することになっていたのよ」