破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
そこに現れたのは、私も夜会などで姿だけは見たことのある、痩身の白髪の男性だった。鷲鼻で薄い唇、酷薄そうな表情。彼を睨む私たち二人を、何か物のように舐め回す不快な視線。
「ライサンダー公爵令嬢。いつもながら、本当にお美しい。貴女が王太子を忘れてくれていたら……色々と、こちらは好都合だったんですが」
「……そうなったとしても、コンスタンスは私を諦めないわ」
毅然として言ったラウィーニアに、ジェルマンはくくっと嘲るように言った。
「お二人は幼い頃から、本当に仲睦まじい。愛し合う二人は美しいですね。だが、そんな心底愛する女性からの関心が一切失われた状態でも、王太子殿下はこの大国の舵取りがそつなく出来るでしょうか?」
「……何が、言いたいの? はっきりと言いなさい」
「王太子殿下は、貴女が思うより貴女を愛しているようだ。ライサンダー公爵令嬢。まあ、それは良い。そちらの、可愛らしいハクスリー伯爵令嬢と共に、こちらの馬車に乗り換えて頂きます。聡明な貴女たちなら、今から自分たちがどうすべきかは……理解していますね?」
ラウィーニアは、私の手を強く握った。そして、私も握り返した。
「ライサンダー公爵令嬢。いつもながら、本当にお美しい。貴女が王太子を忘れてくれていたら……色々と、こちらは好都合だったんですが」
「……そうなったとしても、コンスタンスは私を諦めないわ」
毅然として言ったラウィーニアに、ジェルマンはくくっと嘲るように言った。
「お二人は幼い頃から、本当に仲睦まじい。愛し合う二人は美しいですね。だが、そんな心底愛する女性からの関心が一切失われた状態でも、王太子殿下はこの大国の舵取りがそつなく出来るでしょうか?」
「……何が、言いたいの? はっきりと言いなさい」
「王太子殿下は、貴女が思うより貴女を愛しているようだ。ライサンダー公爵令嬢。まあ、それは良い。そちらの、可愛らしいハクスリー伯爵令嬢と共に、こちらの馬車に乗り換えて頂きます。聡明な貴女たちなら、今から自分たちがどうすべきかは……理解していますね?」
ラウィーニアは、私の手を強く握った。そして、私も握り返した。