破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「……今だから、言うけど。俺様に見せかけた臆病者のクレメントは罪悪感に負けてディアーヌを手放しただけで、付き合っていた時も……ディアーヌを今も好きだと思うわ。本当にわかりやすい男だもの」

 ラウィーニアが何故ここで彼女の推測するクレメントの本心を言った理由は、私には良くわからなかった。

 でも、失恋したてで彼の近づいて来た理由を知り傷ついていた過去の私がそれを聞けば、少しは慰められる情報だったのかもしれなかった。

「そう……あの人と、付き合っていた頃の私も……きっと、浮かばれるわ。ラウィーニア。最後まで諦めないで。コンスタンス様を信じていて」

 そうして私は、そっと彼女から借りた守り刀を取り出した。手を縛ってないのは、どうせ私たちのような非力な令嬢が二人で何も出来やしないと思っていると思う。

 それは確かに、ご名答だけど。

 何か私に出来る抵抗と言えば、小さなナイフで喉を突くくらいしか出来ない。

「待って! 待って……ディアーヌ。私も一緒に」

「……ラウィーニア? だって、貴女。コンスタンス様はどうするの。貴女を失えば、彼は」

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