破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 私が自分の事を自分で、決めたように。彼女の決断も、尊重されるべきではあった。

「時と場合にも、よるわ。確かに選び難い二つではあるけれど……自分で選ぶわ。いつだって、決断を下すのは自分であるべきよ。だって、私の人生を決められるのは、他の誰でもない私だけなのよ」


◇◆◇


 それから、私たちはどうするかで少し揉めることになった。小さなナイフは一本だけ。どちらが先に使うという、結論が出せなかった。どっちも、先に使いたいから。残されるのは短い時間だとしても、嫌だった。

「あまり、これに時間を掛けてもいられないわね……ねえ。ディアーヌ。海に一緒に飛び込みましょうよ」

「海に?」

「そうよ。運が良かったら、人魚に助けて貰えるかもしれないわね」

 世界でも珍しい幻獣として知られる美しい人魚の生息地は、レジュラスよりも南の方だからあまり救助は期待出来そうにないけれど。

 私は、肩を竦めつつ、彼女の提案に賛成した。確かにラウィーニアの希望通り二人で一緒にとなると、海に飛び込むのが一番早い。そして、今のところその方法しか思いつかなかったから。

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