破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「嘘。床面が凍っていて、彼らは足止めされている……? もしかして、ランスロットが?」
というか、現在この船の中では、私たち二人以外は自由に動けなくなっている状態のようだ。通路の奥にある広い甲板の上でも、床に伏せてのたうち回っているような黒い人影が多く見える。
通りでこういう時に、物語で良くある首にナイフを当てられる展開にならなかったという訳。氷の騎士。彼の持つ、その異名の理由……とても良く、理解することが出来た。
「彼の持つ魔力は、聞きしに勝るみたいね。船の中に居る者ほとんどが身動きが取れなくなるなんて……ディアーヌ。自分の恋人で有能過ぎる氷の騎士の力を、こうして目の当たりにした感想はどう?」
「……彼からは、何かで口喧嘩して、走って逃げてもどうやっても絶対に逃げられなさそう」
先ほどまですぐ傍に居た真っ黒な死の恐怖が立ちどころに消えてしまったのを感じて、私たちは顔を見合わせて笑い合った。
迎えはすぐそこで、悪事を企んだジェルマンは報いを受け地獄に堕ちることになるだろう。
◇◆◇
凍った海面を歩いて来た彼らは、とても簡単にこちらの船に乗り込んで来た。
というか、現在この船の中では、私たち二人以外は自由に動けなくなっている状態のようだ。通路の奥にある広い甲板の上でも、床に伏せてのたうち回っているような黒い人影が多く見える。
通りでこういう時に、物語で良くある首にナイフを当てられる展開にならなかったという訳。氷の騎士。彼の持つ、その異名の理由……とても良く、理解することが出来た。
「彼の持つ魔力は、聞きしに勝るみたいね。船の中に居る者ほとんどが身動きが取れなくなるなんて……ディアーヌ。自分の恋人で有能過ぎる氷の騎士の力を、こうして目の当たりにした感想はどう?」
「……彼からは、何かで口喧嘩して、走って逃げてもどうやっても絶対に逃げられなさそう」
先ほどまですぐ傍に居た真っ黒な死の恐怖が立ちどころに消えてしまったのを感じて、私たちは顔を見合わせて笑い合った。
迎えはすぐそこで、悪事を企んだジェルマンは報いを受け地獄に堕ちることになるだろう。
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凍った海面を歩いて来た彼らは、とても簡単にこちらの船に乗り込んで来た。