破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 表情が読みにくいランスロットの顔を、私はまじまじとして見上げた。彼は何かを迷っているようにも、見える。私の見当違いの見間違いで、なければ。

「……それは、また後で詳しく説明します。殿下、我々は安全を第一に考えて船を移りましょう。せっかく奪還した御令嬢方に、万が一があってはいけない。ジェルマン捕縛についてはボールドウィンとクライトンが、上手くやるでしょう」

 ランスロットが淡々とそう進言したので、私は何気なく自分の背後に居たコンスタンス様とラウィーニアを振り返れば彼らは熱いキスの真っ最中だった。

 流石に身内のこんなところを観察するのは無理だった。顔を熱くした私は、パッと視線をランスロットの胸元に戻した。

「わかった……ラウィーニア。行こう」

 そうして、コンスタンス様はラウィーニアを抱き上げた。私の従姉妹はお姫様抱っこされたままで、海面を移動することになりそう。あまりしない経験だと思うし、末代まで語り継いでも良いと思う。

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