破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 頬に直接当たる温かい人肌に、心が落ち着く。それに、こうしてランスロットの彼そのものの匂いを嗅いで、なんだか不思議なことだけど、ここに確かに彼が居るという強い実感も得ることが出来た。

「重犯罪者の行く末は、あまり……聞かない方が良いですよ。貴女の可愛い耳には、そぐわない話だと思います」

 そうして、彼は私の耳にそっと手を当てた。確かに、あのジェルマンはコンスタンス様を激怒させたと言っても過言ではない訳だから……今柔らかなベッドに入っている訳がないよね。

 だからと言って気になる事を聞かなかったら聞かなかったで、私の豊かな想像力が無駄に働いてしまう訳で。悪事を仕出かして、誰にも文句は言えない自業自得だとは言え……彼の計算では、敵対する国まで逃げ切れるはずだったのだ。

「ねえ。ランスロット。後で説明してくれるって、さっき言っていたでしょう? どうして、私たちが捕らえられている船を追うことが出来たの?」

 こうして心身共にどうにかなる前に助けて貰えて……それは、本当に不幸中の幸いで本当に良かったんだけど私はそれがとても不思議でならなかった。

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