破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「……特に、何も。私と護衛のために来ていたクレメントの二人が、元々付き合っているのを聞いて面白がっていたことと……彼女が東の地ソゼクを出ることになったのは、何か色々あったって聞いたくらいしか……彼女とは、話してはいないと思う」

 私はついこの間の出来事の一連の記憶の中から自分がグウィネスと交わした言葉を、なんとか思い出していた。

 でも、どれだけ思い返したとしても、彼女から特に何か問題のあるような事は言われていないと思う。

 筆頭魔術師のリーズからとても気難しい魔女だと聞いていたのに、話しやすくて親切だったことがとても意外だった事くらいしか。

 何故、彼がこんな事を聞くのかを理解出来なくて私は首を傾げた。きょとんとした様子を見て間近にまで迫っていたランスロットは毒気を抜かれたのか、小さく息をついた。

「念のために、言って置きますが。あの魔女は、僕の昔の知り合いです……ですが、僕が一番に愛しているのは、ディアーヌなので」

「え……? 待って。それって」

 その言葉を聞いて、きっと誰もが思うであろう疑問を発しようとした唇は、彼の柔らかな唇によりすぐに塞がれた。

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