破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 身体をもとろけてしまいそうになるランスロットとのキスの感覚は、一度味わったら抗い難い。もっともっとと、快感を欲する本能が求めてしまう。

 でも、どんなに気持ち良かったとしても、誤魔化されないという強い意志は大事だと思う。小さな不信の芽は、その時に目を瞑ったとしてもやがて顔を出すもの。

 私が最低最悪な理由で声を掛けて来たクレメントと唯一付き合って良かったと思う事は、そういった経験は一度失敗しないと身にならないというのを学習したから。

「ふはっ……はあっ……ま、待って! もうっ……ダメ。ちょっと待って」

 唇を離したと思えば、すぐに首に熱い舌を這わせ始めたランスロットに私は制止の言葉を掛けた。

 頭の中では彼が先ほど出した情報は、絶対に警戒すべきだと頭の中の全私が満場一致で可決している。

 そういえば……グウィネスを最初に見た時、私はびっくりしたはずだった。

 とても美しくて、まるで造りもののような人形を思わせるような人。目の前に居る美形で名高いランスロットの隣に居たら……とっても絵になりそうな人。

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