破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「え……グウィネスって、婚約者が居たの?」

 ぽかんとして、間抜けな顔になったと思う。でも、ランスロットは表情を変えずに淡々と話を進めた。

「彼女は東の地では……魔力が強いある有名な一族の娘で、権力を持っている族長の息子との縁談が幼い頃から決まっていた。彼女はそれがどうしても嫌で、レジュラスの東方にあるウルセンという都市に逃げて来ていたんです」

「……そこって、新人騎士の……」

 ウルセンという地名はクレメントから、何度か聞いたことがあった。

 この国の騎士学校を卒業した新人たちは、すぐに能力別に各騎士団に振り分けられることになる。彼らは王宮騎士団に入団した訳だけど、かの騎士団ではすぐにウルセンにある育成機関に送られ、まだ殻のついたひよこ状態の彼らはそこで一人前の騎士になるべく厳しく扱かれるらしい。「もう二度と戻りたくない」と言っていたのは、クレメント談。

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