破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 ランスロットが、防御するには頼りない生地の寝巻きを着ている私の胸の上に大きな右手を置いた。ふわっと彼がそこに触れるだけで、甘い期待が心をよぎる。

 そういうのも、きっとランスロットには全部読まれている。

「……彼女とは三ヶ月ほど付き合いましたが、突然やって来た婚約者を名乗る男性に殴られて終わりました。まさか、グウィネスが……あの婚約者から逃れてレジュラスに来ていることは、知りませんでした。東の地から亡命に近い形で魔女が一人住み着いたということは、一応職務上の情報としては知っていましたが」

「その情報を聞いて、もしかしてって思わなかったの? 東の地から魔女がこちらに亡命するなんて、よっぽどの事なのに」

 レジュラス東方にある通称東の地と呼ばれる国は、余所者は受け入れず閉鎖されている。彼ら独自の固有の文化が栄え、他の国とは一線を画している。とは言っても、大国レジュラス以外とは国境を接していないし、歴代の国王の方針は「あの場所には決して手を出すな」という話だから、あちらが出て来ない限りは彼らに会うこともない。

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