破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 魔力を持つ特定の人のみが使える魔法とは違う呪術と呼ばれるものを使用出来るのも、彼らだけだと言われている。

「これを言ってしまうと……なんて薄情だと言われるかも、しれませんが」

 薄い生地を隔てて敏感な胸に触っているランスロットの右手は、動きそうで動かない。そこ以外の場所には触れられていないというのに、まるで彼の身体全体に包まれているような気もして来た。

「早く言って」

 言葉を止めた彼に焦れた私は、我慢出来ずに言った。

「もう僕はディアーヌの事しか、考えられなかったので」

 何か熱いものが込み上げて目が思わずうるっとしてしまったのは、仕方ないと思う。きっと……私は何かを不安に思ったとすれば、こうして彼からの確かな愛情を示して欲しい。そうして、前に進んで行きたい。

 だから、私は自分で腕を伸ばしてランスロットの首裏に手をかけた。彼の唇に軽いキスをした。ふわっとしている記憶に間違いがなければ、これが人生初の自分からしたキスだと思う。

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