破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 もちろん。彼女は私ととても近い親戚だし、幼い頃から慣れ親しんでいる。ハクスリーの邸に来訪する頻度は、他のお友達と比較してもとても高い。

 けれど彼女は、礼儀作法を完璧にこなす公爵令嬢だ。

 来訪の前には先触れの手紙は欠かさないし、時間はきちんと貴族の訪問に最適とされる時間を選んで訪れていた。

 だから、今回のように私がまだ起きたばかりで、身支度も整えられているない状態の時に来ることは、今の今まで一度もなかった。

 けど、クレメントに明かされた真実がショックで、部屋に篭っていたのはまた別の話だ。あれは特別。

「え……何? 何か、あったの? ラウィーニア」

 自分付きの何人かのメイドに手伝って貰って身支度をしていた手を止め呆気に取られたままの私に近づき、ラウィーニアは苦い表情をして言った。

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