破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「……グウィネスは、彼の部下であるランスロットとの婚約を希望したわ」

 私がラウィーニアが言いづらそうに発した言葉を頭で理解するのに、結構な時間を要したと思う。でも、もしかしたら一瞬だったかもしれない。今となってはわからない。

 私は頭に浮かんだ疑問を、口に出すのに精一杯になったからだ。

「もう、別れているのに?」

 別れている恋人と結婚を望むなんて、考えがたい。けど、現に望んでいる人が居た。

「そうよ。当の本人であるランスロットはこれを聞いて、すぐさまディアーヌが居るからと、毅然と拒絶したわ。でも、上司にあたる王太子に逆らったとなれば、彼が王宮騎士団に所属し続けることは……これで、難しくなるでしょうね」

 ラウィーニアからの現状の説明を聞いて、普通であれば心の奥底から湧き上がるはずの熱い怒りなどは不思議と浮かんでは来なかった。

 他でもないランスロットが自身が今まで彼が苦労して積み上げて来たものを捨ててでも、私と居ると言ってくれたせいかもしれない。

「私とは、付き合っているだけで婚約などもしていない。その立場では、コンスタンス様も、そう言うしかないでしょうね」

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