破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「……叔父様がクレメントとのことで慎重になった事が、これで裏目に出てしまったわね。正式な婚約を交わしているなら、それに何かを命じる事は王族でも難しいもの」

 ラウィーニアは、不機嫌な表情を崩さないままで言った。確かに既に私と婚約しているのなら、それに口出しすることは王太子と言えど越権行為だろう。

「……それでコンスタンス様は、なんて?」

「命が危ないと思えば時間がなく短慮で言ってしまった事とは言え、自分の王太子という責任ある立場で先に交わしたグウィネスとの約束は反故に出来ない。だから、どんな条件でも呑むと言ったのは自分なので、彼女の要望が叶うようには努力すると」

「……要するに、自分の権力が届かないところであれば、ランスロットにはもう何も言わないということね」

 確かに王太子であるコンスタンス様が、グウィネスとの約束を正当なる理由なく反故にすればレジュラスという国の信用を損ねることにもなりかねない。

 だから、彼はグウィネスに努力すると言ったんだと思う。自分が命令を課せない相手に対しては、何も出来ないと。

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