破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「ええ。特別に許可を頂きました」
私がにっこり笑ってそう言えば、隣の控室からあるやんごとないお方が現れた。
この演出は芝居がかって勿体ぶっていると言われても仕方ないけれど、登場方法はあちらのご指定なので、私には責任はないと思う。
「……コンスタンス。いくら婚約者を愛しているとは言え、王太子の立場にあるまじき失態だな」
「父上」
顔色を変えたコンスタンス様は、慌てて上座を降りた。
彼の出番の前口上を終えた私もさっと壁際に避けて、威厳を持って一歩一歩歩を進める王に頭を下げて礼を取った。
この国の国王陛下は、もちろんコンスタンス様のお父様。美形の王太子様の父親は、若かりし頃はさぞや女泣かせだったのだと忍ばれる、レジュラス国王ドワイド陛下だ。
「ディアーヌ・ハクスリーとランスロット・グラディスは、儂が婚約の許可を出した。お前より上の立場の人間がな……そこな、東の地ソゼクの魔女よ。いくら王太子だとしても、この国の貴族院が定めた通りの手続きを経て婚約している男女を引き裂くことは罷りならぬ。諦めよ」
私がにっこり笑ってそう言えば、隣の控室からあるやんごとないお方が現れた。
この演出は芝居がかって勿体ぶっていると言われても仕方ないけれど、登場方法はあちらのご指定なので、私には責任はないと思う。
「……コンスタンス。いくら婚約者を愛しているとは言え、王太子の立場にあるまじき失態だな」
「父上」
顔色を変えたコンスタンス様は、慌てて上座を降りた。
彼の出番の前口上を終えた私もさっと壁際に避けて、威厳を持って一歩一歩歩を進める王に頭を下げて礼を取った。
この国の国王陛下は、もちろんコンスタンス様のお父様。美形の王太子様の父親は、若かりし頃はさぞや女泣かせだったのだと忍ばれる、レジュラス国王ドワイド陛下だ。
「ディアーヌ・ハクスリーとランスロット・グラディスは、儂が婚約の許可を出した。お前より上の立場の人間がな……そこな、東の地ソゼクの魔女よ。いくら王太子だとしても、この国の貴族院が定めた通りの手続きを経て婚約している男女を引き裂くことは罷りならぬ。諦めよ」