破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 私たち二人の婚約を急遽取り纏めるために貴族院を急がせるためには、強権を発動出来る存在にどうにか頼むしかなかった。グウィネスと約束した張本人のコンスタンス様に頼めば「自分に出来る限り努力する」という、彼の言葉を嘘にしてしまうことになるから。

 私も貴族なので、陛下に拝謁するに足る身分は持っている。そして、そちらの息子さんの不手際により、自分がどれだけの窮状に居るかを陳情することも可能だったという訳。

 この方法が上手くいかなかったら、また違う手を考えていたけれど。一番に考えついたこの手で上手くいって、本当に良かった。

 威厳を持ったドワイド様の低い声を聞いて、グウィネスは涙をこぼした。女の私でも、肩を抱いてあげたくなるような儚い様子に胸が締め付けられた。彼女の近くに居るランスロットも、きっと気持ちは同じだと思う。

 けれど、彼はじっとして佇み動くことはなかった。

「何か、他の報酬ではいけないのか」

「……ランスロットは、私の恋人です。今は、気持ちも記憶も忘れてしまっているだけで、取り戻しさえすれば……」

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