破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「君は僕の婚約者に記憶操作をして、落ち込んでいる隙を何を狙うつもりだった? 魔女グウィネスの身柄と交換条件にでも、するつもりだったのか。レジュラスへの宣戦布告として、取っても構わないよね? 僕も……喧嘩するのは嫌いではないんだ。ヘンドリック、やれ」

 コンスタンス様より短く攻撃を命じられた風の騎士の仕業で、光る風の刃がプルウィットへと向かう。けれど、彼は易々とそれを避けて、より表情を険しくした。

「グウィネス。帰るぞ」

 何度も何度も繰り返す高圧的な言い方で、部屋の隅に居たグウィネスに言った。彼女は顔面蒼白で、震えている。

 予想だけど、グウィネスが幾重にも守られた東の森を出たので彼女の位置を割り出したのだと思う。

 だけど、この王城にまで彼が来るとは誰も予測してはいなかったんだとは思う。王宮騎士団を前にして、グウィネスを連れ出せるなんて、きっと誰も想定してもいなかった。

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