破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「嬉しいね。絶対ランスロットより、良い男を捕まえてやるさ。そうしたらお嬢さんに、見せびらかしてやるよ」

 そして、グウィネスは、私にぎこちない礼をしてくれた。恋のライバルは潔くて、一番泣きたいだろう時に明るく笑った。素直に、彼女が凄いと思う。

 そうして去って行くグウィネスの後ろ姿を見送っていると、背後から聞き覚えのある低い声がした。

「ディアーヌ」

「クレメント、仕事しなくて良いの?」

 絶対職務中だと思うのに私の元へと歩いて来たクレメントは、私の疑問には答えなかった。

「おいおい。俺との関係を、利用しただろ? 国営新聞が、跡を継ぐ訳でもない貴族の婚約を報じるなんて珍しい。俺とランスロットがそこそこ知られたライバル関係にあり、俺と別れてすぐにディアーヌがランスロットと婚約するということを利用したな?」

 クレメントは苦笑しつつ、そう言った。彼が想像した通りなので、私は肩を竦めて頷く。

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