破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「内実の知らない人が私たちを見れば、そう見えることはわかっているし、私とランスロットが正式に婚約を発表する時は時間を空けたとしてもどうせ同じ事になるわ。それに、こんな何の利益にもならないどうでも良い話、半年経てば誰も気にしていないわよ。これまでのこと、全部許してあげるから。これについては、クレメントももう何も言わないでよ」

 私がそう言うと、クレメントは皮肉げに笑った。

「おいおい。お前。本当に……俺と付き合ってたディアーヌ・ハクスリー? 偽物じゃなくて? 逞し過ぎるだろ。俺と一緒に居たときはもっと、可愛くて大人しくて……兎みたいだったのに」

 確かにこの事態が彼と付き合っていた時に起きていたとしたら。その私なら、きっと身を引くしかないと諦めていた。

 王太子からの要請で、恋人が仕事を失うことになるのなら、別れることを受け入れていた。自分から、何も言わずに身を引いていた。万が一の希望に賭けて、勇気を出して王様に陳情なんて出来なかった。

 だから。

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