破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 私たち二人は、肩を並べて広い廊下をゆっくりと歩き出した。多数の人が話し合う騒めきが遠くなる。

 レジュラス王城は、何個かの尖塔のある作り。たまに窓から見えるあの塔の先には、誰が居るのかと想像したりもする。きっと、物置きになっていて誰もいないんだろうけど。

「ねえ……私。彼らの話を聞いていて思ったんだけど、グウィネスは本当にずっとランスロットを想っていたのかしら。だって、彼女はあの呪術を解くことが出来るんでしょう? 何故、今まで何もしてなかったの?」

 ラウィーニアは、その部分に引っ掛かったようだった。確かにランスロットに私を思い出せてくれる薬を作ってくれたのは、彼女だ。いくら再び里に帰される危険があろうとも、それを出来たのは彼女だろうに。

「その理由は本人たちにしか、わからない事だけど……グウィネスは、あの時に動いていればと後悔していたようだから。もしかしたら、それと何か関係あるのかもしれない」

 ゆっくりと歩くラウィーニアは、宙を見てここではないどこかを思い浮かべるかのようにして呟いた。

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