破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 そう言えばこれって謝って済む事なのかなと思いつつ、上目遣いで私は言った。そう。先ほど私がやったことに対して驚いていたのは、婚約したお相手であるランスロットも含まれていた。

 どうにかして事前に確認しなくてはと思っていたけれど、物凄く多忙な彼と連絡が取れなくて時間がなかったから。下手な言い訳にしかならないけど。

「いいえ。頼りになるディアーヌの機転のおかげで、僕は騎士を辞めなくて済みそうで助かりました……兄のサインですか?」

 私文書偽造を被害者ご本人にお許し願えたようで、私はほっと胸を撫で下ろした。

「そうなの。当主のサインと一緒に、貴方の名前も書いて貰ったわ」

「全く問題ありません。可愛くて大人しそうな雰囲気のディアーヌが行動的過ぎて、驚きましたけど」

「……どうしても、ランスロットを取られたくなかったし……貴方にも、大事な仕事を辞めて欲しくなかったから」

 ランスロットにぎゅうっと強く抱きしめられて、彼の匂いを大きく吸い込んだ。

「すぐに、結婚します?」

 その言葉に、目を見開いて驚いてしまった。この国の貴族は一年ほどの婚約期間を経て結婚するのが、通例だから。
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