破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜

「しても良いなら」

 ランスロットに言われてすぐにそう口から出てしまったのは、仕方ないと思う。多忙な彼が帰って来る家で、待っていたい。一緒に居る時間を、出来るだけ増やしたい。

 そう願うから、多くの人は結婚するのかもしれない。少なくとも、私はそう。

「それでは、出来るだけ早くしましょう……ハクスリー伯爵は、どう言われていました?」

 婚約成立のために貴族院に提出する書類には、ハクスリー家の当主であるお父様のサインは必須だ。

「すぐに婚約を許してくれないと……」

「なんて言ったんですか?」

「結婚しても……孫に会わせないって、言ったわ」

 そうしたら、ランスロットは嬉しそうに笑った。彼にはいつもこうして笑っていてくれたら良いとは思うけど、彼の職業柄難しいのかもしれない。

「それは……嫌でしょうね。僕もディアーヌと同じ可愛らしい薄紅色の目を持つ子どもに会えるのが、楽しみです」

 私はランスロットに似た子が良いとは思うけど、それはお互いに思っているのかもしれない。

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